合唱劇「カネト」 飯田線あれこれ

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飯田線とは

 飯田線は、豊橋から長野県辰野までを結ぶ、全長195.7kmのローカル線です。
 飯田線の元は、豊川鉄道・鳳来寺鉄道・三信鉄道・伊那電気鉄道の4つの私鉄でした。1943年(昭和18年)に鉄道省(後の国鉄〜JR)に買収され、現在の飯田線に。買収当時、飯田線は「日本一長い電化路線」でした。東海道本線がまだ東京から沼津までしか電化されていなかった頃の話です。
 元が私鉄であったために駅が多く、全線で92駅(豊橋・辰野を除く)もあり、駅と駅の間は平均2.1kmしかありません。飯田線に乗っていると、走り出してすぐ止まるため、とてももどかしく思うものですが、見方を変えると「沿線の人ができる限り歩かなくても電車が乗れるように」というサービスと考えることもでき、交通弱者の方の事を考えると、仕方のないことだと思います。
 飯田線は、ひたすらスピードを上げて先を急ぐのではなく、ゆっくりのんびりと走る姿が似合います。

飯田線の車窓
 
 「起承転結」という言葉がありますが、飯田線の車窓はまさに起承転結です。
 豊橋を出発して豊川・三河一宮・新城と三河の町を走ります。新城を過ぎると田畑が目立ち始め、のどかな景色へと変わります。この周辺は長篠の合戦が繰り広げられた地で、歴史の息吹を感じとることもできます。
 本長篠を出発すると列車は山の中に入り、車窓からは奥三河の豊かな緑が飛び込み、三河川合を出発するとトンネルが多くなります。飯田線にはトンネルが138箇所もあり、その大半が三河川合から天竜峡までの区間に集中しています。
 大嵐駅から天竜川(進行方向左手)と併走します。天竜川や山の緑は、季節や天候によって色が変わるので、この区間に乗車される際は、車窓を観察されると面白いと思います。
 天竜峡駅を出発すると渓谷を走ってきた景色が一変して伊那盆地へと入り、飯田から辰野までは、中央アルプスと南アルプスが車窓の友になります。天気が良くて空気が澄んでいる時(冬から春にかけてがお勧めです)のアルプスは美しく、一見の価値があります。
 駒ヶ根・伊那市と過ぎ天竜川の川幅が狭くなると、終点の辰野に到着します。豊橋から三河・遠州・伊那を抜けて辰野まで、全区間乗り通すと6時間以上の旅になります。途中、湯谷温泉や天竜峡、飯田、駒ヶ根などで下車しながら旅されると、自然を思う存分堪能することができると思います。

飯田線の「縁の下の力持ち」

 飯田線のうち、旧・三信鉄道の区間(三河川合〜天竜峡)は、土砂崩れや落石などの自然が多く、「土砂崩れの飯田線」として鉄道関係者の苦労の種となっていました。残念ながら、列車が土砂崩れ・落石の巻き添えとなる大きな事故もいくつか発生しました。
 土砂崩れや落石から列車を守りたい… 危険を早めに発見し列車に知らせる為に「落石警戒番舎」という見張り小屋を設置し、保線区の人達が、列車の運行中は常に落石を監視していました。彼らの努力により、事前に大規模な崩落を予想し、事故を防止したケースもあります。
 危険区域の落石防止工事の施行や、落石検知器などの設置により、現在では落石警戒番舎は無くなり、土砂崩れ・落石による列車事故も皆無になりました。しかし、今でも保線区の「人の目」による確認は行われています。運転士や車掌、駅員さんも、常に安全第一をモットーに列車を運行しています。
 今日も飯田線が何事もなく普通に走っているのも、彼らの様な「縁の下の力持ち」の努力があるからです。何事もないことに甘んじず、何でもないことの裏にはたくさんの努力があることを忘れないでいきたいものです。

魅力発見・飯田線 http://www.green.dti.ne.jp/iida/

Text by K.Miura


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