第16回奥三河芸能祭プレイベント 合唱劇「カネト」 新城公演

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第1部 講演 飯田線のあれこれ 「乗って遊ぼう飯田線」
それではまず私自身がなぜ飯田線と関係してくるのか、という話から入っていきます。
私は現在東京で会社員をやっておりまして、飯田線沿線の在住でもなければ、鉄道会社の社員という訳でもありません。
人からよく「どうしてそんなに飯田線が好きなのですか」ときかれるのですけど、私自身はもともと愛知県出身だ、というと、それでいったんは皆さま納得されるんですね。

ただ愛知県は愛知県でも、私が生まれ育った場所は愛知県の西の名古屋市であって、その当時は一度も飯田線沿線を訪れたことはありませんでした。
飯田線沿線地区に何度も通いだしたのは、現在の東京に転居してからで、つまり飯田線の沿線地区から考えれば、私のような人間は完全に「ヨソ者」ということになります。

ただ私のように、沿線に住んでいるのではないが、飯田線が好きだという「沿線外」のファンが非常に多いんですね。
もちろん、どの地域の鉄道でも、その鉄道のファンというものは地元の方を中心に多くいるのですけど、飯田線の様な地元の枠を大きく超えて、全国にたくさんのファンがいるという路線も珍しいのでは、と思います。
鉄道ファンはもちろんのこと、旅行ファンにとっても、「飯田線」という名前は、日本で数あるローカル線の中でも、全国ブランドのローカル線として有名なところなんですね。

一つの例を挙げますと、昔から、鉄道趣味の雑誌で飯田線を特集しますと、ただちに完売となって、絶版扱いになるということがたびたびありまして、そういった例からも、注目度の高い鉄道、ということが皆さまに分かっていただけるかと思います。

では、なぜ飯田線はそんなに人気があるのか、ということを、恐らく地元の方は思いを抱くことと思います。というのも、私も鉄道ファンでない沿線の方と話をするたびに、
「こんなにノロくって本数も少なくて、私たちでさえ乗りたいとは思えない電車に、なんでわざわざ遠くから乗りに来るの?」という話を何度も聞かされているからです。
そのような方に「飯田線は全国でもトップクラスの人気を誇るローカル線」と言っても、にわかには信じてもられないのは当然かもしれません。

それでは飯田線のどこがいいのか。理由はいくつかあると思います。
月並みな表現ですが「景色が良い」というのも理由の一つであります。
「電車の椅子に座っているだけで、きれいな川の流れもうっそうとした森も、そびえたつアルプスも見せてくれる」といった具合でして、路線が長いのだから、景色自体にバリエーションがあるのも、当然のことかもしれません。

路線が長いと言いますが、どのくらい長いかと言いますと、南北に約200km、厳密には195.7kmもの長さがある上に、起点の豊橋と終点の辰野との間に、700mを越える大きな標高差があります。

標高差が高く、南北に長い鉄道ですので、それだけ起点と終点では気候も違ってきてしまうんですね。
例えば南部ではサクラが咲いているのに、北に行くにしたがって冬に近付き、北部では雪が積もっている、なんていうこともあります。
飯田線に乗り続けるだけで、季節の移り変わりを目の当たりにすることができる。こういう経験は、普段の生活ではなかなかできないのではないでしょうか。

それでも、なお飯田線を知っている方にとっては「あんな遅いスピードで、たくさんの駅に止まるので、イライラしてしまうよ」とお思いになることでしょう。
確かに日常生活の場で目的地に一刻も早く着きたいという時は、飯田線の「走っては止まり、止まっては思い出したかのようにまた走り出す」というのんびりぶりに、普段から閉口されているかもしれません。

しかし、普段忙しい日はともかくとして、たまの休みくらいは「先へ先へと進む」はやる心を抑えまして、飯田線という「時間の流れ」に身を任せてみてはいかがでしょう? というのが私の考えです。
例えてみますと、普段聞いているロック音楽を、ちょっとバラードやクラシックに切り替えるような、そんな気持ちで飯田線に乗ってみてはいかがでしょう、と思うんですね。

普段でしたら、飯田線のスローぶりが嫌でたまらないかもしれないですけれども、それを全て、自分の都合の良いように解釈することで、むしろ楽しみにするという方法もあるんですね。

例えば、電車がゆっくり走るのは「皆さま方によく景色を見せてあげたいためですよ」というふうに解釈してみればいかがでしょう。
同じお金をとっておいて「早く着きました」では、同じお金をかけても、何か時間を損したような気分になってしまいますね。

同じように、飯田線は単線ですので、行き違いで反対電車が来るまで待たなければいけないため、駅で長々と待たされる場合がありますが、待たされている時でも「車内で長い間座っていると疲れるでしょう。ちょっとその間だけでも、ホームに出て深呼吸してみませんか」というような、飯田線からのお誘いなのかもしれない、そう解釈することによって、少しは気が楽になりますね。

たばこを吸われる方は「長時間車内に閉じこめられて禁煙するのもつらいでしょう。反対電車が来るまでは、ホームで一服することができますよ」、そんなメッセージと捉えると、ちょっとホッとするところがありますね。

あるいは、「そろそろ喉がかわきましたね、駅前の自動販売機で、何か飲み物でも買ってらっしゃい」と、そんなメッセージと捉えることもできますね。

どうです、心の持ち方一つで、こんなにイライラとしていた心が、ちょっとは和らいでくるような気がしませんでしょうか。
同じ乗るのでしたら、イライラしていては損だと思いますね。
「飯田線に乗っていることは我慢大会だ」とよく言われるんですけど、そういう考えから解き放つことさえできれば、あとは楽しみが待っているだけなんです。

それでは、「どこまで乗っていけば良いのか」という話が出てきますね。
どこまで行けばいいのかという話を忘れていましたが、実のところ本音を言ってしまいますと、「どこまで行こう」というのは二の次で良いと思うんですね。
普通なら目的地があって、目的地まで行くために使う電車ということで使うんですけれども、飯田線に限って言いますと、「飯田線に乗ること」が目的で良いと思うんですね。

しかし、事前に降りる駅を決めておかないで、来た飯田線にダラダラ乗っているだけですと、飯田ですとか岡谷ですとか、信州の奥の方に連れて行かれてしまいます。
それでも景色が素晴らしいので楽しいことは楽しいですけれども、無計画に行ってしまいますと時間がなくなって、帰ってくることができなくなってしまいますので、どこの駅で降りるかくらいは決めておかないといけないですね。

飯田線の沿線地域でも、奥三河や伊那谷は観光資源が比較的たくさんありますので、市販の観光ブックを購入していただいて、それに載っている観光地巡りを楽しむのも一つの手であります。
ただ、私がこの場で特にお薦めしたいのは、飯田線の中部区域、秘境と言ってしまうとちょっと失礼かもしれないですけれども、駅前に誰も住んでいないような大自然の中にも、飯田線でならでかけられます。
そういう所をふらっと訪れるのも、良いのではないかと思います。

駅で言いますと、ちょうど第2部でカネト合唱団の方が歌われる「旧・三信鉄道」の区間となります。
ここでいきなり「三信鉄道」と言われても「そんな鉄道知らないよ」と言われてしまいそうですね。

今から60年余り昔、4つの私鉄がつながり合って完成したのが飯田線ですが、その4つの私鉄の中で一番新しく開通したのが「三信鉄道」の区間です。
三信の三は「三河」、信は「信濃・信州」でして、三河と信濃を結ぶために作られた鉄道が、三信鉄道です。



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