この三信鉄道としてつくられた区間は、今の飯田線の中でも最も山深く地形が厳しい区間です。
現在の駅名で言いますと、三河川合から天竜峡までが旧・三信鉄道区間となります。
さて、皆さんは「駅前」と言いますと、お店が建ち並んでいたり、広い駅前広場があったり、タクシーが並んでお客さんを待っているといったシーンを連想するかもしれないですけれども、飯田線の旧・三信鉄道区間には、駅前にはお店どころか、家一軒すら無い。
駅前広場どころか、道路すら無い。
道路が無いと言うことは、車が駅前まで入っていけない。
歩いてでないと、駅前まで行けない。そんな駅があるんですね。
全国的にも、こうした駅は大変珍しいですけれども、飯田線内では小和田駅ですとか、もう少し北にある田本駅には、車で駅前に入ることが不可能なんですね。
「駅を降りたら、ただちに大自然」といった体験ができることに関しては、飯田線は北海道に匹敵するくらい、全国の駅を巡っている人にとっては有名なんですね。
現在では、一般の人の間でも手軽な健康づくりということで、ウォーキングが盛んになっておりますが、飯田線のように「いきなり大自然にアクセスできる」という鉄道でしたら、その題材にも困ることはありません。
駅がたくさんありますから、「以前はあの駅に行ったから、次はここの駅に行きましょう」という具合に、駅の多さ(駅がたくさんあって、停車駅がたくさんあるから、時間がかかって嫌だという人もいますけれども)を、メニューの多さと好意的に解釈することによって、それを楽しみにしてしまいましょう。
場合によっては、本屋さんで国土地理院の地形図を買い求めていただいて、駅間を一つずつ歩いてしまう、そういう楽しみ方もできますね。
こうして、魅力ある時間を過ごすことができる飯田線。
沿線の皆さまは、いつでも、思い立った時にすぐにでもでかけることができるんです。
そう考えると、これはとっても贅沢なことだと思うんですね。
ゆっくりした時間感覚を持って、気持ちもゆったりとリフレッシュして、美しい自然を見て、ついでにきれいな空気とウォーキングで健康にも役立ち、なおかつ温泉のようなゆっくりと休む自然もある。
「飯田線というのは、地域の文化遺産である。それを目の前にしながら乗らないのは、あまりにももったいないのではないか」というのが、私が声を大にして言いたい主張なんですね。
これが今回の主題である「乗って遊ぼう飯田線」の趣旨となるわけです。
それでは、時間も押してまいりましたので、本日の私の講演をこれにて終了させていただきます。
これからの
「第2部・合唱劇カネト」も存分にお楽しみください。
ご静聴ありがとうございました。
※文章化にあたり、文中の意味を変えぬまま、文法や接続詞を中心に多少加筆しています。